【鎌倉ピックアップインタビュー】腰越漁港所属 漁師 高橋俊行さん

腰越漁港所属漁師 高橋俊行さん

「自分の家の庭のような海だから、変わらずに残していきたい。

サラリーマンを辞めて漁師になったのは40歳のとき。

高橋俊行氏は、15年間サラリーマンとして働いたのちに漁師になった異色の経歴の持ち主。
「魚釣りやサーフィンが大好きで、週末は釣船に乗り、釣りを楽しんでいました。釣れない時に船頭さんが、昨日は良かった、一昨日は良かった、先週は良かったと過去の良い話をするので、実際はどうなのか、毎日やってみたいなと思って、40歳で転向しました」

当初、釣船の船頭として仕事をしていた高橋氏だが、2011年の震災後、釣り客が激減してしまったのを機に漁も行うようになった。現在も週末はお客様を乗せて釣りに出ている。そんな高橋氏の漁師としての専門は網漁。腰越漁港に所属し、腰越丸という船で漁に出る。

「水深15メートルから20メートルの範囲に網を設置して、アジをメインに獲っていますが、それを追いかけて入ってくる、ヒラメ、スズキ、イナダ、ヤリイカ、アオリイカなど季節ごとに多くの種類の魚を獲っています」

 穏やかな口調とすらりとした見た目の高橋氏は、いわゆるがっちりと骨太な漁師さんのイメージとは真逆な雰囲気だ。

こだわりは獲れたての魚をいい状態で少しでも早く届けること。

漁が終わった後、午後からはサーフショップでも働いているという大の海好きの高橋氏。

「ここ相模湾の海は砂浜と磯場(リーフ)混じり合っているので、サーフィンや釣り、マリンスポーツにすごく適した海だと思います。そんな海で獲れる魚は、脂ののりがよく、味もすごくいいです」と日々触れあっている鎌倉の海と魚の魅力を話す。

高橋氏が漁をする上で気をつけているのは、定置網で魚を獲るため、極力魚に傷を付けないようにすること。そして獲った魚はすぐに氷でしめて、少しでも早く取引しているお客様のところへ届けるということだ。獲った魚は、直接取引している料理屋さんに必要な分だけ小分けにして卸すほか、大量に獲れた魚は市場に卸したりもしている。

プリプリでツヤツヤなしらすがおすすめ。

鎌倉の飲食店では、鎌倉の地の魚を知り合いなどの伝手を通して仕入れることが多いという。高橋氏も先輩である鎌倉おでん波平など、卸している店は知り合いがほとんど。

漁師の目線で鎌倉に来たら食べて欲しい魚を聞くと、

「やはり鎌倉に来たらしらすを食べてもらえればと思います。あとは、その日に獲れた旬の魚ですね。お店でおすすめされた物を食べるのが一番だと思います」と答えてくれた。

「しらすはプリプリでツヤツヤなものがいいですね。人それぞれ好みがあると思うんですけれども、生まれたてよりも少し成長した中間くらいの大きさがいいかなと思います」

自分好みのサイズのしらすが獲れた日は、迷わずつまみ食いをするし、四季折々の旬の魚が獲れれば必ずお腹に入れる。これこそまさに漁師の特権だ。

これからも変わらない海であり続けてほしいから。

稲村ヶ崎で育ち、サーフィンや釣りを楽しみ、漁師になった高橋氏。プリプイ

「生まれも育ちも海から数百メートルのところで、子どもの頃から砂浜で遊んでいたので、この海は自分の家の庭のような存在です。砂浜から波打ち際、波打ち際からどんどんどんどん沖へと、自分の成長とともに遊ぶエリアが広がっていったように思います」

だからこそ、高橋氏の湘南の海への思いも人一倍だ。相手は自然だから、昨年は獲れた魚が今年は獲れなかったりすることもある。海の環境の変化も感じている。以前は魚を集めるためにこませ(撒き餌)を撒いていたが、残ったものが海のゴミになることから、自然にかえる疑似餌や釣針を使い、獲り方を変えるといったことも試みている。

「おいしい魚を新鮮な状態で食べ続けられるよう、地域の人たちのコミュニケーションを大事にしながら、いつまでも変わらず代々続けて、残していける海であって欲しいと思います。そして若い人達がこれからもずっと仕事を続けられる環境であり続けて欲しいですね」

湘南の海をずっと見つめ続けて来た高橋氏の漁師としての思いだ。

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