実朝の婚礼が近づく。
その陰で、時政とりくは息子を失っていた。
不可解な死の真相を巡り、駆け引きが始まる。
(ドラマのプロローグより)
実朝は御所の御台所の前に和歌の師、三善 康信といる。
「みちすがら ふじのけぶりもわかざりき はるるまもなき そらのけしきに」
和歌集の中で一番好きな歌を、実朝は政子に誰の歌かと尋ねた。
「あなたの父上の歌ですよ」
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巻狩の間、ずっと天気が悪く最後に雲が晴れた様子を歌ったのだ。
「鎌倉殿も、自分の思いを歌にしてみては如何ですか」
政子は実朝に和歌のたしなみを伝えていた。
義時の妻のえが、義時の食事の相手をしている。
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「実朝さまは、早くお子作りに励まれると良いのですが」
「のえ、子が欲しいか」
義時がのえに尋ねた。
「欲しくないと言えば、嘘になります」
「小四郎さまには太郎さまがおいでになる。それで満足です」
廊下の縁側で二階堂 行政に対して、
「満足であるはずがありません。私が男の子を産んで北条の家督にします。
それでなくては、あんな辛気臭い男と一緒になりません」
それを立聞きした、泰時は妻のはつに、
「裏の顔を知ってしました」
「父上は、どうして、あのようなおなごを嫁とられたのか」
泰時は複雑な気持ちにかられている。
実朝の御台、後鳥羽上皇の従姉妹の千世が鎌倉に着いた。
息子の政範が御台を御所に案内するはずだったと、りくは暗い顔をしている。
千世が祝言の席についている。実朝は盃を干すのを躊躇している。
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「鎌倉殿、召し上がって良いのですよ」
「無事、千世様を京より鎌倉へお連れできました」
「出かける時は、あのように元気だったのに残念である」
大江 広元が残念がった。
「実は、そのことで息子の重保から話したいことがある」
畠山 重忠が皆に計った。
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「実は前の晩に聞いてしまったのです」と、
「これを汁に溶かせば良いのか。味を気がつかれないか」
「味はございません」
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「平賀 朝雅が毒を盛ったと」
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義時が聞き直した。
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重保が平賀に問い質した。
「バカをもうせ、見当違いだ」
「ではあの夜のやりとりはなんですか」
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「私は味付けの係りだ、何か問題があるのか。畠山殿、人に話すとご自分の正気を疑われると」
と平賀は嘯いた。
「あれは平賀が酒に毒をもったと」
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「よくぞ言ってくれた。ありがたい」
義時は重保に礼を言った。
政範の死について、嫌な噂が流れた。
平賀がりくに、言い訳と畠山を討つべきとけしかけている。
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「誰がやったか?畠山 重忠が・・・。畠山が私、平賀を下手人にして言いふれている」
義時は平賀に対峙して言った。
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「夏ならともかく、この季節なら京から鎌倉へ連れて帰れる。なぜすぐ埋めた」
毒をもると顔が浮腫むと言われているからだと義時は推測した。
「畠山を討つ。力を貸してくれ」
時政が義時にいう。
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「鎌倉では、鎌倉殿の命がなくては勝手に動く事はできません」
息子の時房が、
「父上、母上に振り回されているのは止めて欲しい。息子として恥ずかしゅうございます」
義時は義村に妻のえを紹介している。
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「出来たおなごだ。惚れているのか。それならば良いか」
「手に飯粒がついていた。握りを食べながら裁縫をする奴がいるか」
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「政範は、死んでいません。私の中で生きています。畠山を討つ?そのような話があるのですか」
りくは、政子の話をはぐらかしている。
畠山 重忠は息子の重保と平賀 朝雅を対峙させれば、明白になると義時に主張する。
「平賀朝雅は京へ戻っています」
「それが嘘を言っている証拠、後ろめたいから逃げた」
「確かに平賀が怪しい。京には上皇がいる。京を敵には出来ない」
「一旦、武蔵に帰る」
と畠山。
「一度、誤れば戰になる」
と義時。
「私とて鎌倉を灰にはしたくない」
重忠は言い置いて、館を出て行った。
「また来てくださいと言ったが、本当においでになるとは」
「ここに来ると、不思議と心が落ち着く」
実朝が義盛に呟いた。
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義盛は若者たちに、そう言って歓待している。
「和田 義盛とは気兼ねなく話ができる」
「よく言われます。すこしは羽目を外した方がいいのだ」」
「食い終わったら、面白いところへお連れしましょう」
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義盛は実朝、泰時、鶴丸を歩き巫女の居所へ案内した。
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「お婆婆、また来たぞ」
「また、お前か」
「今日は若いのを連れてきた」
「このお婆婆は(歩き巫女)、よく当たるのだ」
「この中に一月、体を洗っていない者がいるな」
「わしのことだ。よく当たる」
「これって占いなのでしょうか」
泰時が不安がって聞いた。
お婆婆は祈りながら、榊の葉に水を浸しては振っている。
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「お前、双六、苦手だろう」
巫女は泰時に向かって言い放つ。
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「雪の日は出歩くな!災いが待っている」
「誰も出歩かないだろう」
義盛がつぶやいた。
実朝は婆婆の一言、一言をじっと聞いている。
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「お前の悩みは、お一人のものではない」
「悩みというのは、そういうものじゃ」
「お前一人のことではないのだ。どうだ、霧が晴れたか」
「今日は、なんじゃ」
「畠山は頼朝に仕えて、これまで懸命に鎌倉を必死になって守って来た」
政範がなくなって畠山が疑われている。
「命を狙った者がいる」
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「それは誰じゃ」
「たとえば、平賀 朝雅」
「誰よりも疑わしいのは、あの男です」
と義時は時政に訴えた。
「根拠のない話だ、動機がない」
「政範殿をなきものして、次の執権は平賀」
義時は、畠山討伐を早まらないで欲しいと時政に迫った。
「はいわかった」
「畠山、討伐は待っていただきますね」
義時は時政に懇願した。
「それで、帰ってきたのですか」
りくは、時政に向かって、怒って言った。
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「北条が全て武蔵を治めるのです」
「兵を動かすには、鎌倉殿の花押が必要なのじゃ」
「ならば、すぐにでも御所へ向かってください」
りくは、時政に迫った。
「父上といえども鎌倉殿はお会いにできません」
鎌倉殿が御所にいないので騒ぎになっている。
「いかがであったか」
「八幡宮にもいなかった」
「鎌倉殿に、もしものことがあれば、私の責任です」
「もしも我らが見つけられなければ、執権でも見つけられない」
しばらくすると、鎌倉殿が御所に帰った。
「すまない、こんな騒ぎになっているとは」
実朝が一人、和歌集を読んでいると、そこへ時政がにじり寄り、
「ここに花押を一つ」
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「とりあえず、父はわかってくれた」
義時は武蔵国へ向かい畠山に会った。
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「お主が鎌倉でなすべきことは、潔白をいうべきです」
「わしを呼び寄せ、討ち取るのでは」
義時は、まさかと取り合わない。
「もし、執権殿と争うと、義時はどちらに着くのか」
「・・・・」
「執権で良い、私ならそうする。鎌倉を守るため」
「鎌倉を守るという言葉は便利なことだが」
「本当に鎌倉のために戦うならば、あなたが戦う相手は、本当はわかっている」
「それ以上は言わない」
畠山 重忠は言い切った。
(つづく)
【埼玉県深谷市】
今回のゆかりの地は埼玉県深谷市です。
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【畠山重忠公史跡公園】
畠山重忠公の屋敷跡で、現在は公園として整備されています。
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園内には重忠公とその家臣たちの墓と言われる五輪塔が祀られています。
重忠公の産湯の井戸、銅像があります。
名称 | 畠山重忠公史跡公園 |
所在地 | 埼玉県深谷市畠山510-2 |
【井椋(いぐら)神社】
畠山重忠の父・重能が畠山に移り住んだ時に、曽祖父が秩父にある椋神社を勧請したと言われています。
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名称 | 井椋(いぐら)神社 |
所在地 | 埼玉県深谷市畠山942 |
【満福寺】
寿永3年(1184年)に畠山重忠が再興しました。
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【千手観音像】
重忠の位牌が残されて、観音堂には重忠の守本尊で等身大の千手観音像が安置されています。
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【畠山重忠像】
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名称 | 満福寺 |
所在地 | 埼玉県深谷市畠山931-1 |
【嵐山渓谷】
埼玉を代表する景勝地のひとつで、岩畳と清流、木々の織りなす自然環境は嵐山町の宝物です。
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名称 | 満福寺 |
所在地 | 埼玉県比企郡嵐山町鎌形2627 |
また次回もお楽しみに!