出席者 前衆議院議員浅尾慶一郎さん
鎌倉農泊協議会代表 大川桂一 アドバイザー 間宮武美
■浅尾慶一郎さん
東京都出身。栄光学園高等学校、東京大学法学部卒業。
■本日の対談場所は「琥珀-AMBER」
鎌倉で『非日常な時間と空間』をコンセプトに「Blue Lagoon」「Pine Tree」「Leaf」の3施設を手がけたホストが次に提供する 「琥珀-AMBER」は、約100年前に建てられた、鎌倉材木座の歴史を静かに見守ってきた古い家に新たな息吹を与え、新旧が織りなす贅沢で和モダンな空間に作り上げた古民家バケーションハウスです。
■対談のはじめに。
高齢者の活動について
間宮:みなさん、こんにちは。鎌倉農泊協議会アドバイザーの間宮と申します。今日は、鎌倉在住で前衆議院議員の浅尾慶一郎さんを材木座にありますT-REEF VACATION HOUSE「琥珀」という古民家を改築した宿泊施設にお招きし、鎌倉農泊協議会で抱えている課題をいろいろな角度から、鎌倉在住の生活者としての浅尾慶一郎さんにヒントをいただければと準備をいたしました。
大川:今日はお時間をいただきありがとうございます。間宮さんは、博報堂を退社されたあとに、浅尾さんもご存知のように、鎌倉からソウルまで歩いて行って、その後韓国の安東市と鎌倉の姉妹都市の提携に尽力されたという方ですね。アドバイザーとして参加いただいた間宮さんからご紹介いただき、浅尾慶一郎さんと対談しようと今回の対談企画になりました。浅尾さんはやっぱり間宮さんを元気な方だなと思いましたか。
浅尾:そうですね、なかなか歩いてソウルまでは行かれないですからね。それ以外でも安東市との姉妹都市など都市提携交流も一生懸命やっていただいておりますので…。
大川:早速なんですけど、我々協議会のほうで鎌倉に対しての問題提起というかこうしたらいいのではないかと思っていることがありますので、いろいろお話を聞かせていただければと思います。
間宮:大川さんは東京で「ブレイン・トラスト・フロム・ザ・サン」という不動産関係のお仕事をされているんですけれど、その大川さんが、なぜ鎌倉で古民家再生かということから始めましょう。
大川:東京で65歳以上の方が就業できる場所をということで、東京駅の近くに「創業支援施設」を弊社でつくりまして、そのときに採用した方が、現在、鎌倉の事業の責任者をしていだいている富永忠男さんの先輩で、「遊びの天才がいるんだと」。サーフィンもできるし、手先も器用だし、空き家を再生してインバウンド事業してみないかという提案を受けました。そういった流れで、富永さんを紹介していただきました。富永さんはお会いしたら面倒見もよさそうで、責任感もありそうでしたので、この方に宿を一軒お任せしてやってみようということで事業を始めました。一軒目がすごくうまくいきまして、二軒目、三軒目とやって、ここ「琥珀」が四軒目の宿になるんです。ここは買い取って事業化しました。ここの以前の所有者さんは、高齢者の方が1人で維持することが大変になって不動産屋さんに売却して、その不動産屋さんが解体して、二棟現場として分譲しようとしていたのです。ここを壊してしまうよりは、私どもで買い取って再生していこう、古き良きものを残そうということで事業を始めました。
高齢者の就業場所ということで始めた東京の創業支援施設がきっかけで古民家再生宿が誕生してました。(笑)高齢者の方の就労場所を行政や民間が、手を取り合いながらやっていかないといけない問題かなと思っています。高齢者の就業者を確保するという問題について、浅尾さんはどういった考えをお持ちでしょうか。
浅尾:そうですね、若い世代の人たちも少なくなってきていますから。一方で元気な高齢者の方が多いので、できる限りそういった場所を確保していくということはいいと思いますし、特にいろいろな意味で新しい取り組みをされてる企業、あるいはNPO等もあるのではないかと思います。確か四国の徳島のほうで大葉の生産を高齢者がやっているという試みもありまし、ですからそのいろいろな形でお仕事していただくことは非常に大事なことじゃないかと思います。
間宮:鎌倉でも「セカンドライフ鎌倉」という、鎌倉市役所中心になって、パソコンが出来て少し外国語ができる人を集めて、「トリプラス」というグループを作って、世界中からいろいろな方を鎌倉に呼ぶため、そば打ちを教える、広町緑地公園を案内する、自転車で町を歩くなど、いろいろな案で活性化をするために企画しチラシまで作ったのですが、このコロナ禍でインバウンドが見込めなくなっているんですけど、こういった動きを鎌倉市でも取り組んでいただいて、僕もその一員で参加させて頂きました。いろいろなところで、そういう動きがあるのではないでしょうか。
■鎌倉の空き家対策について。
大川:あとは「空家再生」ですね。私ども国交省のモデル事業でも、空家再生というものをやっています。空き家が2030年には30%くらいになるという総務省の統計データがあります。空家が増えると、そこに変な人が住み着いたり、火事だったりといった問題がでてくる。鎌倉市は風光明媚な住宅街で比較的にそういった問題が少ないところだとは思います。しかし、日本全体ではそういう問題も出てきているなかで、空家の活用や空家問題についてはどのようにお考えをお持ちでしょうか。
浅尾:今コロナでいろいろな方がリモートワークをしておりますが、実は鎌倉・逗子・葉山は土地売買の引き合いが多いところだと聞いています。出勤を毎日しなくてもいいとなったら、少し東京から遠いところで働きたい。それにはいつくか条件がありまして、共稼ぎの方が多いので同じ部屋でリモートするわけにはいかない。この間笑い話として、住宅を作っている生産団体連合会というハウスメーカーの会の専務理事さんのお話ですと、東京の中で、共稼ぎ家族がリモート生活になったので、別の部屋を用意しなければならない。奥さんは部屋がなくトイレでリモートワークをしているといった話がありました。そういうことを考えたときに空家で比較的に広い家を活用出来たらいいかなと。条件というのは、インターネット環境を整えなくてはならないということがありますね。かつて鎌倉市が古民家何棟かにネットの環境を入れて、そこを就労場所にしたケースがあります。これから国の予算でやるかは別にして、山間ですから電波とか光回線が届いてないようなところをwi-fiなどを使ってネット環境を整えていくことが重要だと考えています。そういう形で空家の活用をしていくといいと思います。それからもう一つは、大川さんへの質問になるんですが、日本の場合は空家の価値が、土地が不動産価値になってしまうんです。本来はここ「琥珀」だったら、家としてどれくらいの価値があるかというのを計算できる形にしていくことも必要なのかなと思います。せっかく空家を売買する際に、土地だけの値段となるといいものがあっても、それが評価されないというのはもったいないと思います。
大川:浅尾さんがおっしゃったように、大きな土地を住宅地として分筆して売っていくという発想の開発は我々不動産業界の中では終焉を迎えてきているのかなと思っています。銀行は土地本位制ですよね。不動産=土地の価値を見て融資するということが、今まで行われてきています。そうではなくていかに建物を運用していくか。例えばこの「琥珀」もこの形で残せたからこそ鎌倉農泊協議会というものが立ち上がって、それが農水省の助成事業となって、宿泊施設として皆さんが来ていただくことになりました。そこにコミュニティが生まれて、新しい雇用が生まれて、みなさんの就業場所になり憩いの場になるということで、事業的価値を見出していただけるかと思います。私どもで今やっている小規模不動産特定共同事業法というのは、まさしく銀行だけに頼らず、周りの篤志家に出資していただいて、地域参加型でこういう事業をやっていこうと。ただ残念ながらそこまで日本の経済や金融機関は成熟していないので、琥珀に関しては当社でお金を借りて運営していますが、これが本当に市民参加型で篤志家の資金でできるようになってくるとだいぶこういう形も増えてくるのではないかと思います。
間宮:先日、松尾市長とも対談をさせていただいたときには、今鎌倉は約1割の空家問題を抱えていると。それをどんどん循環できたらいいのだが、いろいろな障害があって、住む人が周りとどれだけ共生できるかというところがあって、対策を講じていくことが必要だと。空き家1割といった問題は大変な課題として鎌倉も抱えているというお話がありました。
浅尾:こういった昔のものの良さを活かしながら、その良さを活かしたときに評価してくれるような人に泊まっていただいて、結果として地元にお金が回るようにしないといけないということなんだろうと思います。
大川:そうなってくると関わってくるのは不動産鑑定士だったりして、1級建築士という資格者に見てもらう必要があります。どうしても関心は都心の大きいビルのほうにいってしまいます。国がある程度このように地方も活かそうという考え方のもとで、人件費等を考えられると地域の再生は進んでいくのかなと思います。
浅尾:そうですね。あとは個人が宿泊でなく使う場合は、セカンドハウスといったものとして、それを評価する人が使うということだと思います。
大川:今回、菅政権に変わって、地方創生、二拠点生活、ワーケーションというのが注目を浴びてまして、農水省から受託している観光事業でこの「琥珀」をワーケーションと二拠点生活のモデルケースとして、撮影に使いたいというお話をいただいております。うちの宿に泊まってくださる方が、東京の比率が高くなっています。やはり二拠点生活やワーケーションは弊社のスタッフもしています。ご主人が銀行員でご主人がメインで書斎を使ってしまって、奥さんはキッチンでやっていると、ご主人がつまみを取りに来たときにだらしない格好で写ってしまうということなどを考えると、おっしゃる通り、ワーケーション用、二拠点生活の部屋もいるし、仕事部屋も確保しなければならいない。そうなると我々の業界もだいぶ変わってくるのかなと思います。
■飲食店の活性化について
間宮:先ほどの空家というか、こちらの琥珀も約4年くらいですかね、そこから市内で6つの宿舎を運営して、ここは所有ですけども、業務委託したりなどいろんなかたちで展開しています。
大川:鎌倉はフランスのホストシティということもあり、江ノ島でセーリングの大会があるということで、そのチームが訓練でここへよく泊まっていただいたらしいんです。そうすると「ミスター忠男、この町でおいしいレストランはあるか」と質問されて、外国人のかたに推薦のできるチャンネルを作ったほうがいいなと考えられて、そこが活性化につながったということです。今はインバウンドが無く、東京からが多いんですけど、鎌倉の飲食店もコロナ禍でテイクアウトを始めたりして、フェイスブックで【頑張ろう
鎌倉】というサイトがあり、テイクアウトを始めた情報など地域の叫びがでてきています。そう言った意味で僕らの活動は、泊まっていただいて宿の近くでご飯を食べていただく、それが一次産業者へ循環していくというかたちがとれます。今、コロナ禍の中で飲食店を経営されている方は大変な時期ですが、飲食店に関する問題意識など感じていることはありますか。
浅尾:飲食店は今コロナの影響を結構受けていますけども、影響が大きいのが、席数が多く宴会などで使われるお店と思います。大きな企業のみならず、宴会をやっていないので、そういった系統の飲食店は大変ですよね。もちろん、規模の小さい飲食店も密にならないように席数を減らしたりしていますから、売り上げは減っていると思います。その分、今おっしゃったテイクアウト、出前(ウーバーイーツや出前館)を活用していくことなんだろうと思います。こちらの業界は伸びていると思いますが。ただこれも、初めて出前を始めるところは、ノウハウと、保健所観点で見ると、本来よくない包装で出しているところもあるので、そのあたりは緊急避難的にというところなのだと思いますが、これが常態化していくのなら、ちゃんと考えないといけないなと思います。
間宮:僕の関わっている会社のメンバーも5人以上の会合には参加してはいけないという決まりが、未だに解けていなく、たまに会おうかといっても、だめです会社が許してくれないと断られてしまいます(笑)。鎌倉の飲食店もいろいろな問題があるのではないかと思います。
浅尾:個人経営の方なんかは、生命保険を解約したというお話も聞きますし、先ほど申し上げた席数の多い店舗は、ビルから退去してしまい、今度はビルのオーナーの方が困っているという状況になっています。
大川:大船のお話が出たんですが、我々は、山森ファームにお世話になっていて体験農園をやっておりまして、そこで富永夫妻には野菜を作ってもらっています。サーフボード作りではなく、野菜作りにチャレンジされています。鎌倉野菜は十分知られているブランドだと思うんですけど、鎌倉の農業についてどうお考えですか。
浅尾:鎌倉野菜は本当に専業でやっている方はそんなに多くはないです。ただし、鎌倉そのものでブランドになりますので、鎌倉野菜も鎌倉という名前がつくことでブランドになっていて、割と珍しい種類の野菜を作っています。そこのレンバイ(鎌倉市農協連即売所。鎌倉野菜の発祥の地と言われている)で野菜を買って銀座のレストランにもっていくということもあります。銀座の3つ星か、2つ星のレストランの総料理長もそこで買っていくことがありました。可能性として少量多品種をつくることによって鎌倉の名前でもって、丁寧なつくりというイメージを持ってもらえるようになるといいかなと思います。
■富永さんの農園体験とは
間宮:浅尾さん、今日はここの「琥珀」など管理をしています、富永忠男・悦子夫妻が立ち会っていますので、私と大川さんに変わって、少し農園体験の話を続けて戴けますか。
大川:富永さんとの出会いがきっかけでこの宿も始められていますが、本業は サーフボー
ドを作るシェイパーをやられているんですが、今は野菜づくりにチェレンジしてい
ます。山森ファームという農園で2区画を借り、体験農園をするためにまず自らが体
験ということで、ご夫婦で野菜作りをしてもらっています。
悦子:鎌倉野菜は、非常にブランド力があり、東京の銀座や、有名なレストランにも「鎌
倉野菜の〇〇」といったかたちでメニューに載るまでになっています。私たちもレンバイ(連売)などで目にする機会はありましたが、自分のたちでも作ってみたいという想いがあり、手掛けてみることにしました。今は、カリフラワー、ブロッコリー、白菜、葉物を作っており、成長中のため、まだ収穫には至っておりませんが実がなり始めて、葉物が成長してという様子が愛おしくてたまらないです。自身で育てた野菜を食す日が楽しみでなりません。「鎌倉農泊協議会」がなければ鎌倉のお野菜を自身で育てることはなかったと思うんですが、こういう経験ができたことを非常に嬉しく思っております。また皆さまにも実際に体験していただき食していただけるように推進していきたいと思っております。浅尾さんから見ても鎌倉野菜は魅力のあるお野菜でしょうか。
浅尾:そうですね。今はカリフラワーにもいろいろな色がありますよね。
悦子:黄色やオレンジもありますね、大根も然りですが。
浅尾:いろんな種類や色合いがあり、見た目がきれいなものが多いですね。いっぱい作る
ほどではないでしょうが、いろいろな種類があるということが、食事の時の色彩面でいいと思います。収穫してから食べるまでの時間を短くできると思いますし新鮮に食べられるところが魅力かと思います。鎌倉には、関谷の中に新風館というところがありますが、その入口のところで落合さんという農家の方がいまして。
悦子:存じ上げております。この前作業をしておりましたら、「あなたたちの育てた野菜はすごいね、素人じゃないでしょ」と声をかけてくださったのが落合さんでした。
浅尾:落合さんのところは家の前で、自動販売機で野菜を売っており、近隣の人が買いに来て1時間に1回程度入れ替えないと、売り切れてしまうようです。余談ですが、コロナが流行り、自販機に対する助成金も国から出ているようです。対面販売しなくていいということで、自販機が売れているおり、今から買っても手に入るのが来年になり、来年だと今年の助成金がおりないからと困っていました。農業を実際に自分でやり、野菜を自分で作られると楽しいと思います。
浅尾:今年初めてですか。
悦子:はい。今年初めてトライしてみました。
浅尾:去年は地面の上にできるものは台風で大変だったと思いますが、今年は幸い台風があ
まり来ていないので良かったと思います。私も何人かで100坪の土地を栄区のほう
に借りて、最初は蕎麦から始めて、じゃがいも、玉ねぎと作りました。じゃがいもと
玉ねぎは土の中にあるので毎日行かなくても大丈夫でした。蕎麦も実が固いため動物
に食べられる心配はないのですが、2年連続で台風が直撃し収穫ができませんでした。
蕎麦は、おそらく今年は収穫できるかなと思っています。鎌倉野菜の話に戻しますと、
今作っているカリフラワーやブロッコリーは多少手がかかるのではないですか?
悦子:そうですね。今年は虫の発生が異常だとうかがっておりましたので、度々畑に行って虫の害がないかということは確認しておりました。また、葉物は間引きをして、カラフルな根菜を植えたので上手に間引かないとということで作業をしてきました。今のところ順調に育っているので、全部食すことのできる野菜に育つかなと思っております。
忠男:あとは雑草ですね。雑草だけは毎回とらないと。
悦子:周りに声をかけてくれる農家の方もいますし、山森さんにもお知恵を戴いて、畑をいい状態に保てています。
浅尾:農薬は使わずにやっているのですか。
忠男:使っていないですね。
浅尾 :実は、まだできていないんですけれども、鎌倉では漁業も盛んです。ウニが大量発生した結果、鎌倉の海が磯焼けになっていて、駆除したウニを葉山の方では潰して、カルシウムがあるので堆肥にしています。堆肥を作っる知り合いの方に話すと、鎌倉のものも持ってきてくれれば堆肥にしますとおっしゃってくれているので、それを無料で鎌倉の農家に還元して、鎌倉の海でとれたウニの堆肥で育った野菜といったストーリーを作ると鎌倉野菜の話として面白いかなと思います。またそれをサーファーの皆さまがボランティアでとってくれると、地域みんなが参加できることになると思います。
■鎌倉ブランドとJAPANブランドについて
間宮:鎌倉ブランドの話につながってJAPAN BRANDの話をできるといいかと思います。
大川:そうですね。いま漁業の話も出たので。実はこの前富永夫妻の紹介で腰越の漁師さんとうちのスタッフで魚を釣って、「山葵」という宿に「シチリアーナ」というレストランのシェフに出張してきていただいて魚を食べるということをしました。鎌倉ではないんですが、藤沢の片瀬漁協さんが農泊協議会に入るという話になって、今その取り組みを進めているところです。一つの小さな宿から始めたんですが、どんどん“瓢箪から駒”といいますか、“嘘から出たまこと”じゃないんですけれども、「鎌倉農泊協議会」が大きな任意団体となってきています。そうなってくると鎌倉だけではなく様々なところと連携しなくてはいけないということで、今は浅草で宿を始めまして、それを東国三社とつなげてJAPAN BRANDという中小企業庁の助成事業にしていただきました。SDGs型農泊ということで漁業や農業関係とつないで農泊という体験型宿泊施設をやっていこうと思っています。先ほど浅尾さんがおっしゃっていた二拠点生活やワーケーションとなるとどうしても他の地域との連携が必要になりますね。鎌倉はおっしゃるようにブランド力が強くて、皆さん鎌倉が好きで鎌倉に憧れるというかたちになってくるときに、オーバーツーリズムはかつて問題がありましたけれども、地方と他の都市のとの関わりかた、特にお聞きしたいのは東京との関わりかたやここでいうと藤沢との関わりかたというのはすごく重要になってくるのではないかなと思います。ご意見をいただいてもよろしいでしょうか。
浅尾:鎌倉は宿泊施設がそんなに多くなくて、ホテルでいうとプリンスとパークホテルと駅前にJRのメトロポリタンホテルができましたが、そんなに多くなかったので、まだまだ宿泊施設の需要は大きいと思います。それは東京から来られる方や、藤沢から来て泊まる方はいないかもしれませんが、藤沢の持ってる観光資源との連携は十分考えられるかと思います。具体的に言えば、今は鎌倉でも少し始まっていますが、少し前までは、“地引き網漁”は鎌倉ではやっておらず、片瀬の西浜でしかやっていなかったのですが、今は不定期でやっており、藤沢の地引き網と連携して、宿泊されたあとに地引き網漁の体験ができるという取り組みがあってもいいと思います。鎌倉というブランドとの関係で、東日本大震災があった際に被災地に行って気仙沼に入ったんですね。3.11の直後は別のところに行き、気仙沼には6月頃に入ったのですが、行く途中のラーメン屋さんにフュージョンギタリストの渡辺香津美という方のサインがあって、そこに入ってあっと思ったのが、JAZZのフェスティバルを開いたら面白いかなと思いました。
平泉というところに義経が最後に行って亡くなるんですが、東北の海側はすべて義経が通った伝説が残っているんですね。義経伝説が東北の海沿いにあるので、そこと鎌倉とタイアップした観光イベントや観光資源ができたらいいなと思っています。
はじめは義経JAZZフェスティバルを東北でやったら、鎌倉にはJAZZのバーもあるので、そこのオーナーの息子さんはプロのJAZZシンガーであったりするので、そのような話もできたらと思っています。
東京・藤沢の連携はもちろんですが、全国いろいろなところに鎌倉幕府があっただけに鎌倉と縁があるところはあると思いますので、そういったところと連携するような話も考えられたらと思います。今は、インバウンドは難しいですが、長期で滞在していただける方がいらっしゃいましたら、鎌倉を拠点にしながら全国の鎌倉と縁があるところで、外国の方が行って面白いところを紹介するのもいいかなと思います。
間宮:鎌倉もそういう意味では国内の姉妹都市は武家の始まりの鎌倉と、武家の終わりの萩市と組んだり、上田市と組んだりそういう視点での交流とか、七里ガ浜と七ヶ浜では震災のサポートの交流が行われてます。ネットワークは大川さんが設置した「鎌倉農泊協議会」は今後発展していく農泊というテーマの中で、(フォトコンテスト)や、これから(子供たちの作文コンテスト)とかやりたいですね。賞品は段ボールいっぱいのお野菜とか、クーラーボックスいっぱいのお魚とかね。
僕の現役時代、会社の仲間を集め鵠沼に親しい堀川という網元さんがいて、地引き網を7年やってまして、5月5日が7年間1度も雨が降らずに150人くらいが集まってお金を集めて個人でやりました。厚生部の部長が会社の運動会にぶつけないでくれと言われました。子供が生きたお魚を捕まえてすごく喜んで頂いた。また来年来ますといったケースが、いつか鎌倉でもできるのではと思うんですね。そこの部分は大川さんとこれからプランニングして行きたいと思ってます。
大川:間宮さんの博報堂のキャリアを聞いて流石と感じたのは、富永さんや鎌倉に住んでる方を主役と考えて行動する。我々東京から来た不動産屋が主役では意味がないですからね。音楽等は人を盛り上げるので凄く良いと考えていて、「鎌倉歌姫コンテスト」を開催しようとした所、間宮さんからそれでは人は集まらないと思いますと言われまして、どうしたら人が集まりますか?と聞きましたところ“子供が参加できるイベント”をテーマに、子供に詩や手紙を書いてもらう。いつも食してる野菜さんへのお手紙や、海の幸へのお手紙等を鎌倉農泊協議会へ送ってもらい順位付けを行い、先ほど話していた段ボールいっぱいのお野菜やクーラボックス
いっぱいのお魚を送る案として農泊に繋がる案を間宮さんに出して頂いた。普段からおじいちゃんとして、お孫さんを見てらっしゃったりして、今までお子さんを育ててきた感覚の中で『おじいちゃんの知恵』が凄く人を惹きつける物があると感じました。鎌倉に住んでいる方が主役であり、生活者が主役と考えると素晴らしい企画だと感じました。地域参加型のイベントにどうしたら現地の方が多く惹きつけ参加して頂けるかが重要なテーマです。オーバーツーリズムの話もありましたけど、我々東京の不動産が宿を運営し入って来たことに対して、鎌倉の方と互いにリスペクトしていくためにはどういったことが必要だとお考えでしょうか。
浅尾:鎌倉は基本的に外から来た人が文化を作ってきた町だと私は思っています。戦前、明治大正のころに昭和の初めのころもそうかもしれませんが、東京から来て夏に別荘で使っている人たち、その人たちと一緒に来て結果的に移り住んだ文士といわれる人たちが、おそらく鎌倉の文化を作ったのかなと思います。オーバーツーリズムという話もありましたが、鎌倉に住んでいる人の中にも文士が住んでいる鎌倉の文化に憧れて移り住んだ人も多いのではないかと思います。よく言われている話で鎌倉には三種類の人がいます。極少ないと思いますが鎌倉幕府以降住んでいる方たち、文士や別荘があり疎開でそのまま移り住んだ方たち、またそういう方たちの文化に憧れて移り住んだ人たち。3番目の人たちが人数としては一番多いですね。中にいる人たちが文化を伝承してきたという部分もありますが、移り住んできた人たちが文化を作ってきたところがあると思います。外から来た人の知恵であるとか、外の人が評価する鎌倉の良さとか、またそれを受け入れる土壌があるのではないかと思います。
■他所モノと、内モノの合体で・・・
間宮:僕は広告会社にいたということもあり、企画を考える際に、ブレインストーミングでたくさん意見はでるが、何のためにアイデアをだしているのかという目的が大切になってきます。僕らは「鎌倉農泊協議会」として考えていたときに、歌姫コンテストを開いたらどうだろうと話にあがっていたが、それは「鎌倉農泊協議会」と、どこで目的が一致するのかと疑問に思いました。僕はコンクールみたいなものをやればと意見を出し、地域の子供や特産物などと繋げられるし、小さい子どもでも参加でき活動の裾野を広げられると考えました。物事を考えるときにはコンセプトをしっかりもって組み立てるということが必要になります。また内モノ、外モノといった点は、大学時代に親の事情で藤沢に10年と、結婚して鎌倉に40年と合計50年湘南にいるのですが、ここ15年くらいでやっと鎌倉に住んでいると言えるようになりました。この前石渡さんと対談した時にも同じ話題が出たのですが、長谷の町も、ご自分が持っている「萬屋本店」を大改造したという話も、鎌倉以外の人がウエディングで使うために貸してという声が大きかったという。ある価値を守りたいという気持ちと、こうしたらもっと良くなるのではないかという気持ちがあると思うのが、鎌倉の人のみの同心円で考えるよりも、もうひとつの視点をつくった異心円があれば、よりいいものになるのではないかと思います。僕はそれを主張して、大川さんに仲間に入れてもらったという経緯があります。
オーバーツーリズムで鎌倉に2000万人くるというのは有名な話かもしれませんが、1人あたり平均3500円しか使わないそうです。お寺や神社で1000円から1500円、ランチに1500円、残りは鳩サブレなどのお土産を買うという消費しかないと考えられます。ある時、松尾市長にもお金を使っていただくインフラは何かないですかねと声をかけたことがありました。最近大川さんと出会いました。そこで宿泊してもらって町で食事をしてもらってという仕組みを作れるということで参加しました。松尾市長がおっしゃっておりましたが、今までは鎌倉は2000万人という数で考えてきたが、人が多すぎても困るという問題があり、数という見方は変えないといけないと考えるようになったと聞きました。クラウドファンディングをやると、鎌倉が好きなので応援したいという方がいるように、初めて知った言葉ですが「交流人口」や「体験人口」というお話が出ました。鎌倉市もそれを目指すと。僕らがやっているのもまさにそうだと思います。東京から出てきていただき、農園や地引き網を体験してもらうなど。そういったことで数ではなく、使ってもらう金額を増やす仕組みを大川さんが考えようという方針に従って、みんなでアイデア出しをしています。
浅尾:鎌倉に住んでいる人からすると、2000万人が仮に4000万人になると、最近は解消されていますが、土日は江ノ電に乗れないなどの問題がでてきます。観光者数の人数を増やすことよりも泊まれる場所をつくり、1人あたりの消費額を増やすことで、単純にいえば3500円が350000円になれば、鎌倉へ来た人が10倍になることと、お金の面でいえば一緒になりますね。お金を使っていただける場所を作って、それが雇用につながるというのが一番いいかなと思います。
間宮:去年のインバウンド時代には、小町通りでお土産を爆買いしていく人がおり、使っていただくお金が増えていました。しかし、これは他動的な問題解決で、このインバウンドの波が去ったら、もとに戻ってしまいますね。僕らのような小さな団体でも、そういったことに対する知恵をつけていければ、何かお役に立てるのではないかと思います。これから大川さんと一生懸命知恵を絞らないといけないなと思います。
大川:体験で人力車に乗ると、人力車の方がスポットを教えてくれたり、日本人はもともと判官贔屓で義経が好きなので、義経が行ったところを巡ってみたり、松尾市長も言っておりましたがコト体験をすることのブランディングを小さい団体ながら継続していければと思っています。「鎌倉農泊協議会」として、大変に参考になりました。浅尾さんも本日はありがとうございました。
間宮:最後になにか一言いただけますか。
浅尾:現在6施設あるものを増やしていただきながら、宿泊のみならず農園や地域でできる体験をつくっていただけると、来訪された方にも喜んでいただけると思いますので今後ともよろしくお願いいたします。